Paulo Coelho

『O Alquimista/アルケミスト』
                    Paulo Coelho/パウロ・コエーリョ

「夢を旅した少年」という副題がついています。
パウロ・コエーリョはブラジルの人気作家です。
哲学的物言いをよくするある若い女性に教えられて読んだ『星の巡礼』
という作品が、この作家との出会いです。
先に読んだその物語は、正直私にはよく理解が出来ない世界でした
でも言葉には出来ない何かが残ったような
何度か読めばもっと確実なものがつかめるようなそんな気がして
とりあえずは他の作品を探してみようと
そして手にしたのが『アルケミスト(錬金術師)』です。

少年は、神学校で学ぶよりも旅することを欲し
スペイン・アンダルシア地方を60頭の羊と旅する羊飼い
同じ場所で見た同じ夢に導かれて、ジブラルタル海峡を渡りアフリカへ
砂漠を越えピラミッドの宝物を目指す旅に出る
・・と簡単に言うとこういうお話。

まさに今、
自身が抱いた思いがたくさんちりばめられていたのに驚いて、一気に読み終えた。
久々に面白いものに出会ったなぁと、薄い200ページ足らずの本を手にとり
気がつくとまた最初からページを開いて読み返していた。
真実は意外と単純でわかりやすいものなのだと
今を、自らを心澄まして読みとれば、おのずと未来はつかめるのだと
そう教えてくれる。
子供にも、大人にも読みやすいお勧めの一冊です。

   2003年5月記


『Veronika Decide Morrer 
             /ベロニカは死ぬことにした』
 
                    paulo Coelho/パウロ・コエーリョ
                        
パウロ・コエーリョの 『ベロニカは死ぬことにした』
重苦しそうな暗そうなタイトルだけれど、
きっとその裏返しのメッセージを発する小説なのだろうと思い込んで選んだ

ベロニカは、24歳の普通の女性
代わり映えのしない日々だけど、それなりに恵まれている
できる事もひととおり体験してみた
特に不満はないけれど、あとは坂道を下るだけ
世の中でおきている理不尽に気付きつつも、何かがなせるわけでなく
生き続けることへの執着心をなくし、死ぬことにした

ところが、意識は戻ってしまった、精神病院の集中治療室で
そして、告げられた言葉は「長くて一週間」
その一週間をどう生き、その一週間に関わった人たちはどう生き続けるのか

まさに生きることを、強く感じる内容なのだけど
差し迫った生の終わりを前に、自分ならどう過ごすだろうか
という視点で読めばいいのか
それとも、死に行く若い命を見つめつつ、自身がどう死ぬために生きるか
を考えればいいのか
わからないままいまいちぴんと来ない、ふらついた読み方をしてしまった

多少でも医療に関わっていたせいか、若干疑問をもつところもあった
途中、作者自身が登場する部分も、興醒めしたり、逆に感心したり
読み始めてすぐに、先が読めてしまったり
でもこの作品においては、先が読めることは大した事ではなかったり

考えるきっかけを与えてくれる一冊なのだと思う
ベロニカが死ぬことにしたと同じ言い訳を思いついたら
あるいは、そういう思いを口にする人がそばにいたら
そのたびに読んでみるといいと思う
読むたびにきっと、何かが見えてくる気がする
さらりと読めてしまうけれど
込められているメッセージは簡単だけど
受ける側が持つ思いは、読み返すごとに深みを加えるだろう


「やりたいことは、もうみんなやってきたかな」
「大事な人がいて、大事に思ってくれる人もいることも知っているけど」
「でも、もう終ってもいいかな」
こんな言葉をよく聞かされます
聞かされるほうは、結構辛いものです
自分で死を選んではいけません
より良く死ぬために生きて行かなくちゃ

  2003年7月記


『NA MARGEM DO RIO PIEDRA EU SENTEI E CHOREI
    /ピエドラ川のほとりで私は泣いた』

                    Paulo Coelho/パウロ・コエーリョ 1994

幼馴染の若者は、世界を学ぶため町を出て行った
ピラールが大学生になった頃、便りを交わすようになり
神について語り奇跡を起こすその若者とやがて再会し、そして愛を打ち明けられる
愛というのは、ひとことで言い表せる感情なんだろうか
「愛している」という言葉の真意は文章からは分からない、きっとその場にいても分からない
神を愛することと男女の愛とを区別して表現する言葉があってしかるべきなんじゃないだろうか
ピエドラ川のほとりで涙するピラールの悲しみも、「愛の癒し」の意味も、私には良くわかりません
カトリックの信仰が分からない私には無理なのかもしれません

タイトルのイメージでは、死にたくなるほど悲しいお話なのかと思っていたんですが
ピラールが最期に流す涙は、どうやら冷たい涙ではないようですよ

                          2005年05月10日記
                     


【パウロ・コエーリョの作品】



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